日本聖公会京都教区は「差し戻し審」の意味が判ってい
るだろうか。そこが一番大きな問題点だ。「審判廷を開け
ばいいのだろう」くらいにしか考えていないとすれば、差
し戻し審の審判廷を開く能力はないとしか言えない。一般
的に差し戻し審は、上級審の差し戻しの理由に拘束される。
つまり、あの管区審判廷の審判の「理由」と「判断」に、
京都教区の差し戻し審は拘束されるということなのだが、
日本聖公会京都教区がそれをどこまで認識しているかが問
題だ。
そもそも、京都教区審判廷の補正命令と申立却下の理由
に関しては、実状を知っている者にとっては笑い話にもな
らないほど愚かしいことに見えていた。「あれじゃ、まる
でガキの喧嘩だな」と言っていた隊士もいた。それも、弱
い者を強い者が上から踏みつけたのと同じだろう。被害者
と被害状況を特定できないのは、京都教区自身が公開して
こなかったからであるのだが、しかし、あの加害司祭が犯
した性的虐待の被害者とその実状に関しては、日本聖公会
京都教区はすべて知っていたのだから、あの補正命令と申
立却下は、あまりにも卑劣な判断でしかない。そして、そ
れを管区の小審判廷は見抜いていたから、差し戻し審を命
じたことは、審判の主文以下、すべてを読めば明らかなこ
とだ。
それでもなお、日本聖公会京都教区が審判廷で被申立人
を正式に審判することが出来なければ、日本聖公会京都教
区は最早、教会としての生命を自ら絶つことになるのだが、
日本聖公会京都教区がそれを認識できているかどうか。京
都周辺にいろいろと流れている裏情報を耳にすると、彼ら
が被申立人を裁くことは極めて難しいことのようだが、そ
の難しいことをあえて貫徹しなければ、この問題は解決し
ないというのが、管区小審判廷の判断ではないのだろうか。
つまり、被申立人を日本聖公会の法憲法規に則って裁き、
そして自らの過ちに関しても裁かなければ、問題はいつま
でも残るということだ。
最高裁の上告却下の後、「冤罪」「最高裁に抗議する」
などという声明を何の根拠もなく出してしまったことに関
しては、もはや問答無用のことだ。そして、あの裁判の被
害者に対する性的虐待行為を、加害司祭はいまだに認めて
いないようだが、あの裁判記録からすれば、それがどれほ
ど不自然なことか誰にでも判るだろう。日本聖公会京都教
区はそうした自らの過ちをも悔い改める差し戻し審を開か
なければ、問題が治まらないどころか、ますます泥沼化し
ていくだろう。そして、被害者とそのご家族の傷がますま
す深くなる。日本聖公会京都教区の執行部は、自らの身を
守ることではなく、被害者とそのご家族の思いを大切にす
べきだ。あの被害者とそのご家族のお名前は、いまでも日
本聖公会の教会の信徒名簿に残っているのだから。
